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てきすとあっぱーかっと投稿
※温泉旅館の双子。
第2章 少年ファイター


窓ガラスをたたく音。
やっぱり来たかとあきれる一方で、彼らが訪れることをどれほどか楽しみにしていた
自分に複雑な感情を抱いた。とまあ難しい描写はどうでもいいが、
おれは窓際のカーテンを勢いよく開けた。
満面の笑みををひんやりするガラスに押し付けていたのは、けんただった。
窓の鍵をはずすや否や飛び込んでくるけんた。
続いて壁に隠れていたゆうたもおれを驚かそうとわっとおおきな声を発し飛び込んできた。
けんた「ねえねえ、お風呂の続きやろ?」
真っ赤なタンクトップに白いハーフパンツ。髪の毛はまだビタビタにぶれているけんたが
おれに飛び掛りながらいった。おれはベットの上に押し戻されながらけんたを抱きかかえた。

「おまえさっきのダメージ、ちゃんと回復したか?」
けんた「はあ?ダメージなんてぜんぜんないしー。」
ゆうた「けんたは大丈夫だよ。弱いけど。」
同じく黒いタンクトップに黒のハーフパンツのゆうたが口を挟んだ。
けんた「じゃあみせてやろうじゃないの。びびりくん。」
おれの両腕にしっかりと抱きかかえられてひざの上に乗っていたけんたがゆうたを挑発した。
ゆうた「いいよ。じゃあいつものボクシングで」
二人は洗面所に山積みになっていたタオルを両手にすばやく巻いてグローブにした。
けんた「どっちが強いか見ててね。カーン!」
自分でゴングの音まで再現して小学5年生のボクシングがおれの目の前で始まった。
おれはあまりボクシングのことは知らないが、
この二人の動きや構え方が妙にそれらしくなっているのが面白かった。
だが二人のプレイスタイルは明らかに違っていて、
そう以前テレビで見たたつなみとやくしじの試合を思い出させるものだった。

ここでやや詳しく説明しよう。けんたは両こぶしを顔の前でそろえ状態を丸めて構える。
一方ゆうたは両方の手をだらんと下げて胸を張り軽快なステップで相手との距離をとる。
お互いのルールで首から上はなしということだが、あとは基本的に何でもありで
たまにけりまで飛んでいる。
両者の攻撃の目標はやはり腹部へのダメージであるが、なぜかこの二人、腹部は隙だらけである。
試合に戻ろう。おれもやや興奮気味にこの小さな少年ファイターの打ち合いを観察するのだが、
嬉しいのは彼らも同じらしく、攻撃が決まるとにこにこし、
周りがとめない限りいつまでもやっているのではないかと思うほどのめりこんでいた。

けんた「ほれ、必殺!レイガーン!」どしゅ、どしゅ、どしゅ
意味不明な技の名前と共に何発もゆうたの腹部に強打がめり込む。
ゆうた「きくかそんなん、ゴムゴムのー!ピストル!」ぐぎっ
ふたりの加減のないパンチが次から次へとヒットしている。
そのたびに愉快なリアクションで余裕を見せるゆうた。
やがて汗ばんできた二人は服を脱ぎ捨てちょっと真剣な顔つきになってきた。
けんた「試合再開!カーン!」
白いパンツのけんた。黒パンツのゆうた。どちらも真っ黒に日焼けしたたくましい上半身に、
2滴3滴ときらりと光る汗が流れ落ちている。
まるまるとしたゆうたの上腕筋と真横から見るとその上腕筋の太さからはみ出るほどの胸筋の分厚さ。
パンチが妙にめり込むやわらかい腹筋。でも腹の表面はボコボコと段差が確認できる。
そして小さいお尻にすらっと長い足。
慎重自体はおそらく平均並みのものだがスポーツマンらしい恵まれた体系である。
一方けんた。基本的にはゆうたの構造と同じである。が全体的に筋肉に張りがあって硬い。
筋肉が緊張しているという表現が適切かどうかはわからないが、そんな感じである。
動きが俊敏で軽い。こいつもスポーツマンの素質によく恵まれている。

けんた「くらえ!カメハメハ!」ゴン
けんたの一撃がゆうたの右高のあたりに直撃しゆうたが壁際に追い込まれた。
けんた「ゆうた!かくごー!」どん!どん!どん!
和太鼓をたたくような音がした。けんたの攻撃がゆうたの胸部を打撃している。
2発、3発、4発、5発、さすがのゆうたの表情も痛みでゆがんでいる。そして・・・
・・・。
けんた「とどめ!」ぶすぶすぶしゅぶしゅ
半歩前に出てゆうたとの距離を一気に詰めたけんたは、ゆうたの腹に強烈な連打を浴びせた。
その間約15秒ぐらいだろうか。直前の和太鼓の音とは違い、にぶく、静かな体の悲鳴が聞こえた。
鋭く縦方向に傾いたけんたの両こぶしは、ゆうたの腹の同じ点をひたすらに打つのであった。
打たれっぱなしのゆうた、大きく口を開け、目は細く、まさに苦痛の表情で耐えていた。
ふと思うのだがゆうたは自分の両腕で腹をガードすることもできるはずなのに、
いやこの疑問はむしろけんたにもいえることなのだが、
彼らにガードするという概念はまったくといって良いほど存在しないようである。
そしてかべとけんたのこぶしにはさまれ続けたゆうたの内臓君たちは、
けんたのフィニッシュパンチで開放されるのであった。

けんた「おりゃあああ!」ぐん
へそ。そうこれがけんた必殺のへそパンチである。
ゆうた「いってえええええええええ!」
腹を押さえて転げまわるゆうた。
そうなのである。このけんたのへそパンチは激痛なんてものではない。
後々これを食らったおれが何よりの証人である。
けんた「おっしゃあ!今日はおれの勝ち!」

しばらく転げまわっていたゆうたもいつの間にかおれの横にちょこんと座っていた。
おれは両脇にけんたとゆうたをおいて汗まみれの二人と肩を組んだ。
息を切らしながら脱力した少年ファイターたちがおれに寄りかかった。
おれの手のひらが二人の胸の辺りに触れると、激しく鼓動する心臓が必死で
全身に血液を送り込んでいるのが伺えた。さらに手を伸ばして少年ファイターたちの腹部に到達した。
荒い呼吸音と共に上下する腹筋。ひたすら殴られ続けた両者の腹筋はやや熱を持って温かい。
その感触を十分に味わいながらポンポンとたぶきの腹太鼓をたたいた。
「えーっと、おまえらサイコー!」
おれを見上げにこっと笑った笑顔が、こいつらの魅力であり、
同じ顔をした双子のなんともいえない特権であるように感じた。

けんた「やばい!いま何時?」
突然けんたが叫んだ。ゆうたも飛び起きて時計を探した。
そして次の瞬間、ふたりは入ってきた窓から勢いよく飛び出し、何も言わずに立ち去るのだった。
あとに残されたのは突然の出来事に驚いているおれと、
ベットの上に脱ぎ捨てられたやつらの服・・・・・・。
数日後この日の真相を知ることになるのだが、
少なくともこの時点でおれはかれらのもつ「闇」の部分に気づくことはなかった。

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